2期分の財務諸表による諸比率の算定(A〜J)とキャッシュ・フロー分析(資金概念・主要比率・純キャッシュ・フロー・資金運用表と資金繰表)の空欄補充
これは建設業経理士1級 財務分析 第35回(2024年9月8日(日)実施) 第5問(配点 30点)の問題です。論点は「キャッシュ・フロー分析(純CF・完成工事高CF率・営業CF対流動負債比率)」(重要度A・解答の形は問1:別添資料から10比率(A〜J)を算定(2点×10)。問2:分析文の空欄10個を用語・数値群から選ぶ(1点×10))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。
A建設株式会社の第34期(決算日:20×5年3月31日)及び第35期(決算日:20×6年3月31日)の財務諸表並びにその関連データは<別添資料>のとおりであった。次の設問に解答しなさい。
問1 第35期について、次の諸比率(A〜J)を算定しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をすること。ただし、Bの当座比率は、建設業特有の勘定科目の金額を控除する方法により算定すること。また、Gの付加価値増減率については、プラスの場合は「A」、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入し、数値欄に符号は付けないこと。Jのキャッシュ・コンバージョン・サイクルは、各計算過程において求められる数値の小数点第3位を四捨五入し第2位まで求め、その合計を解答すること。なお、解答に際しての端数処理については、解答用紙の指定のとおりとする。
A 経営資本営業利益率 B 当座比率 C 借入金依存度 D 支払勘定回転率 E 労働装備率 F 運転資本保有月数 G 付加価値増減率 H 配当率 I 棚卸資産滞留月数 J キャッシュ・コンバージョン・サイクル
問2 同社の財務諸表とその関連データを参照しながら、次に示す文中の【 】に入れるべき最も適当な用語・数値を下記の<用語・数値群>の中から選び、その記号(ア〜ハ)で解答しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をし、小数点第3位を四捨五入している。
安全性分析のひとつである【1】分析は、貸借対照表や損益計算書だけでは分析できず、黒字倒産などの倒産可能性を把握するためにも重要な分析と位置付けられている。今日においては、キャッシュ・フロー計算書で資金の増減が示されており、そこでの資金概念は、【2】を意味している。キャッシュ・フローに関する分析指標はそれほど多くなく、建設業経理士検定試験で出題される財務分析主要比率表では、【3】比率の【4】と収益性比率である【5】の2つがある。第35期における【5】は【6】%である。
一方、過去における上場企業や非上場企業では、資金計算書、連続した2期間の貸借対照表を比較することで各項目の増減を算定して資金の源泉と運用とに区分整理した【7】や資金調達とその運用の動きを知るために【8】などが作成されている。この場合には、営業キャッシュ・フローの代用として、「【9】+減価償却実施額−法人税等+貸倒引当金増加額−売掛債権増加額+仕入債務増加額−棚卸資産増加額+【10】増加額」が用いられる。
- <用語・数値群>
- ア 正味運転資本 イ 現金預金 ウ 経常利益 エ 流動性 オ 営業利益 カ 健全性 キ 資金運用表 ク 現金及び現金同等物
- コ 未成工事支出金 サ 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率 シ 資金変動性 ス 総資本営業キャッシュ・フロー率 セ 税引前当期純利益 ソ 未成工事受入金
- タ 剰余金の配当の額 チ 資金繰表 ト 建設仮勘定 ナ 完成工事高キャッシュ・フロー率 ニ 1.30 ネ 1.93 ノ 2.42 ハ 3.05
| <別添資料>貸借対照表(資産の部)(単位:千円) | 第34期 20×5年3月31日現在 | 第35期 20×6年3月31日現在 |
|---|---|---|
| Ⅰ 流動資産 現金預金 | 320,300 | 282,900 |
| 受取手形 | 25,400 | 3,400 |
| 完成工事未収入金 | 1,087,000 | 1,264,600 |
| 有価証券 | 4,300 | 3,100 |
| 未成工事支出金 | 35,900 | 13,200 |
| 材料貯蔵品 | 3,900 | 3,600 |
| その他流動資産 | 143,500 | 182,400 |
| 貸倒引当金 | △70 | △90 |
| [流動資産合計] | 1,620,230 | 1,753,110 |
| Ⅱ 固定資産 1.有形固定資産 建物 | 123,600 | 137,800 |
| 構築物 | 33,100 | 29,400 |
| 機械装置 | 145,800 | 156,400 |
| 車両運搬具 | 37,800 | 38,400 |
| 工具器具備品 | 23,500 | 24,300 |
| 土地 | 191,300 | 187,700 |
| リース資産 | 23,400 | 22,700 |
| 建設仮勘定 | 60,200 | 66,800 |
| 有形固定資産合計 | 638,700 | 663,500 |
| 2.無形固定資産 のれん | 2,400 | 2,400 |
| その他無形資産 | 1,900 | 2,100 |
| 無形固定資産合計 | 4,300 | 4,500 |
| 3.投資その他の資産 投資有価証券 | 106,100 | 104,600 |
| 関係会社株式 | 3,200 | 3,200 |
| 繰延税金資産 | 29,900 | 20,100 |
| 長期前払費用 | 1,400 | 1,500 |
| 退職給付に係る資産 | 12,400 | 14,100 |
| その他投資資産 | 35,900 | 36,700 |
| 貸倒引当金 | △5,400 | △5,300 |
| 投資その他の資産合計 | 183,500 | 174,900 |
| [固定資産合計] | 826,500 | 842,900 |
| 資産合計 | 2,446,730 | 2,596,010 |
| 貸借対照表(負債・純資産の部)(単位:千円) | 第34期 20×5年3月31日現在 | 第35期 20×6年3月31日現在 |
|---|---|---|
| Ⅰ 流動負債 支払手形 | 23,100 | 25,100 |
| 工事未払金 | 323,400 | 347,400 |
| 短期借入金 | 188,800 | 307,100 |
| 未払金 | 3,200 | 3,400 |
| 未払法人税等 | 17,300 | 16,200 |
| 未成工事受入金 | 157,900 | 106,600 |
| 預り金 | 182,600 | 209,200 |
| 完成工事補償引当金 | 8,600 | 8,900 |
| 工事損失引当金 | 18,100 | 13,200 |
| その他流動負債 | 154,500 | 185,400 |
| [流動負債合計] | 1,077,500 | 1,222,500 |
| Ⅱ 固定負債 社債 | 10,000 | 10,000 |
| 長期借入金 | 109,400 | 103,400 |
| 退職給付引当金 | 13,400 | 6,100 |
| その他固定負債 | 51,600 | 33,700 |
| [固定負債合計] | 184,400 | 153,200 |
| 負債合計 | 1,261,900 | 1,375,700 |
| Ⅰ 株主資本 1.資本金 | 189,800 | 189,800 |
| 2.資本剰余金 資本準備金 | 190,400 | 189,700 |
| 資本剰余金合計 | 190,400 | 189,700 |
| 3.利益剰余金 利益準備金 | 14,800 | 14,800 |
| その他利益剰余金 | 782,730 | 827,810 |
| 利益剰余金合計 | 797,530 | 842,610 |
| 4.自己株式 | △15,300 | △22,300 |
| [株主資本合計] | 1,162,430 | 1,199,810 |
| Ⅱ 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金 | 22,400 | 20,500 |
| [評価・換算差額等合計] | 22,400 | 20,500 |
| 純資産合計 | 1,184,830 | 1,220,310 |
| 負債純資産合計 | 2,446,730 | 2,596,010 |
- 〔貸借対照表の付記事項〕
- 1.流動資産中の貸倒引当金は、受取手形と完成工事未収入金に対して設定されたものである。
- 2.その他流動資産は営業活動に伴うものであるが、当座の支払能力を有するものではない。
- 3.投資その他の資産は、すべて営業活動には直接関係していない資産である。
- 4.引当金及び有利子負債に該当する項目は、貸借対照表に明記したもの以外にはない。
- 5.第35期において繰越利益剰余金を原資として実施した配当の額は 15,400 千円である。
| 損益計算書(単位:千円) | 第34期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日 | 第35期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日 |
|---|---|---|
| Ⅰ 完成工事高 | 2,198,200 | 2,135,700 |
| Ⅱ 完成工事原価 | 1,984,400 | 1,955,400 |
| 完成工事総利益 | 213,800 | 180,300 |
| Ⅲ 販売費及び一般管理費 | 115,100 | 114,800 |
| 営業利益 | 98,700 | 65,500 |
| Ⅳ 営業外収益 受取利息 | 190 | 230 |
| 受取配当金 | 2,700 | 3,290 |
| その他営業外収益 | 4,570 | 2,150 |
| 営業外収益合計 | 7,460 | 5,670 |
| Ⅴ 営業外費用 支払利息 | 2,510 | 3,030 |
| 社債利息 | 200 | 200 |
| 支払手数料 | 150 | 100 |
| その他営業外費用 | 230 | 140 |
| 営業外費用合計 | 3,090 | 3,470 |
| 経常利益 | 103,070 | 67,700 |
| Ⅵ 特別利益 | 2,370 | 5,410 |
| Ⅶ 特別損失 | 930 | 360 |
| 税引前当期純利益 | 104,510 | 72,750 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 17,240 | 15,370 |
| 法人税等調整額 | 12,040 | 6,700 |
| 法人税等合計 | 29,280 | 22,070 |
| 当期純利益 | 75,230 | 50,680 |
- 〔損益計算書の付記事項〕
- 1.第35期における有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費の合計額は 11,200 千円である。
- 2.その他営業外費用には、他人資本に付される利息は含まれていない。
| キャッシュ・フロー計算書(要約)(単位:千円) | 第34期 | 第35期 |
|---|---|---|
| Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー | △26,700 | △139,500 |
| Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー | △23,900 | △25,800 |
| Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー | 45,500 | 127,900 |
| Ⅳ 現金及び現金同等物の増加・減少額 | △5,100 | △37,400 |
| Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高 | 325,400 | 320,300 |
| Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高 | 320,300 | 282,900 |
| 完成工事原価報告書(単位:千円) | 第34期 | 第35期 |
|---|---|---|
| Ⅰ 材料費 | 349,200 | 346,100 |
| Ⅱ 労務費 | 120,300 | 133,700 |
| (うち労務外注費) | (120,300) | (133,700) |
| Ⅲ 外注費 | 1,118,100 | 1,065,000 |
| Ⅳ 経費 | 396,800 | 410,600 |
| 完成工事原価 | 1,984,400 | 1,955,400 |
| 各期末時点の総職員数 | 第34期 | 第35期 |
|---|---|---|
| 総職員数 | 50 人 | 52 人 |
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正解
| 問1 A 経営資本営業利益率 | 2.87 % |
|---|---|
| 問1 B 当座比率 | 139.25 % |
| 問1 C 借入金依存度 | 16.20 % |
| 問1 D 支払勘定回転率 | 5.94 回 |
| 問1 E 労働装備率 | 11,521 千円 |
| 問1 F 運転資本保有月数 | 2.98 月 |
| 問1 G 付加価値増減率 | 3.23 % |
| 問1 G 付加価値増減率の記号 | B |
| 問1 H 配当率 | 8.11 % |
| 問1 I 棚卸資産滞留月数 | 0.09 月 |
| 問1 J キャッシュ・コンバージョン・サイクル | 146.81 日 |
| 問2 空欄1 | シ |
| 問2 空欄2 | ク |
| 問2 空欄3 | エ |
| 問2 空欄4 | サ |
| 問2 空欄5 | ナ |
| 問2 空欄6 | ネ |
| 問2 空欄7 | キ |
| 問2 空欄8 | チ |
| 問2 空欄9 | ウ |
| 問2 空欄10 | ソ |
解き方
- 期中平均を使うのは、貸借対照表の残高(経営資本・支払勘定・有形固定資産・総職員数・受取勘定・棚卸資産)を損益計算書のフロー(完成工事高・利益)と対比させる比率。当座比率・借入金依存度・運転資本保有月数・棚卸資産滞留月数のように期末の状態を示す比率は第35期末残高で計算する。
- A 経営資本営業利益率=営業利益÷経営資本(※)×100。経営資本=総資本−(建設仮勘定+投資その他の資産)(付記事項3により投資その他の資産はすべて営業活動に直接関係しない)。第34期末 2,446,730−60,200−183,500=2,203,030、第35期末 2,596,010−66,800−174,900=2,354,310、平均 2,278,670。65,500÷2,278,670×100=2.874… → 2.87%。
- B 当座比率(建設業特有の科目を控除)=当座資産÷(流動負債−未成工事受入金)×100。当座資産=現金預金 282,900+受取手形 3,400+完成工事未収入金 1,264,600−貸倒引当金 90+有価証券 3,100=1,553,910(その他流動資産は付記事項2により含めない)。1,553,910÷(1,222,500−106,600)×100=1,553,910÷1,115,900×100=139.252… → 139.25%。
- C 借入金依存度=(短期借入金+長期借入金+社債)÷総資本×100=(307,100+103,400+10,000)÷2,596,010×100=420,500÷2,596,010×100=16.198… → 16.20%。
- D 支払勘定回転率=完成工事高÷(支払手形+工事未払金)(※)。第34期末 23,100+323,400=346,500、第35期末 25,100+347,400=372,500、平均 359,500。2,135,700÷359,500=5.940… → 5.94 回。
- E 労働装備率=(有形固定資産−建設仮勘定)(※)÷総職員数(※)。第34期末 638,700−60,200=578,500、第35期末 663,500−66,800=596,700、平均 587,600。総職員数の平均=(50+52)÷2=51 人。587,600÷51=11,521.5… → 11,521 千円(千円未満切り捨て)。
- F 運転資本保有月数=(流動資産−流動負債)÷(完成工事高÷12)=(1,753,110−1,222,500)÷(2,135,700÷12)=530,610÷177,975=2.981… → 2.98 月。
- G 付加価値増減率=(当期付加価値−前期付加価値)÷前期付加価値×100。付加価値=完成工事高−(材料費+労務外注費+外注費)で、労務外注費は外注費として扱う。第34期 2,198,200−(349,200+120,300+1,118,100)=610,600、第35期 2,135,700−(346,100+133,700+1,065,000)=590,900。(590,900−610,600)÷610,600×100=△3.226… → 3.23%、マイナスなので記号はB。
- H 配当率=配当金÷資本金×100=15,400÷189,800×100=8.113… → 8.11%(資本金は両期とも 189,800 なので期中平均でも同じ)。
- I 棚卸資産滞留月数=棚卸資産÷(完成工事高÷12)。棚卸資産=未成工事支出金 13,200+材料貯蔵品 3,600=16,800。16,800÷177,975=0.0943… → 0.09 月。
- J キャッシュ・コンバージョン・サイクル=受取勘定回転日数+棚卸資産回転日数−支払勘定回転日数。各回転日数は残高(※)÷(完成工事高÷365)で、1日当たり完成工事高=2,135,700÷365=5,851.23…。受取勘定(受取手形+完成工事未収入金)は第34期末 1,112,400、第35期末 1,268,000、平均 1,190,200 → 1,190,200÷5,851.23=203.410… → 203.41 日。棚卸資産は第34期末 39,800、第35期末 16,800、平均 28,300 → 4.836… → 4.84 日。支払勘定は平均 359,500(Dと同じ)→ 61.440… → 61.44 日。203.41+4.84−61.44=146.81 日。
- 問2 安全性分析のうち、貸借対照表・損益計算書だけでは分析できず黒字倒産の可能性を把握するのが資金変動性(シ)分析。キャッシュ・フロー計算書の資金概念は現金及び現金同等物(ク)。主要比率表でキャッシュ・フローを使う指標は、流動性(エ)比率の営業キャッシュ・フロー対流動負債比率(サ)と、収益性比率の完成工事高キャッシュ・フロー率(ナ)の2つ。
- 問2【6】完成工事高キャッシュ・フロー率=純キャッシュ・フロー÷完成工事高×100。純キャッシュ・フロー=当期純利益(税引後)±法人税等調整額+当期減価償却実施額+引当金増減額−剰余金の配当の額。引当金は貸倒引当金(流動・投資)・完成工事補償引当金・工事損失引当金・退職給付引当金で、第34期末 70+5,400+8,600+18,100+13,400=45,570、第35期末 90+5,300+8,900+13,200+6,100=33,590、増減額 △11,980。法人税等調整額 6,700 は費用として計上されているので加算する。純キャッシュ・フロー=50,680+6,700+11,200−11,980−15,400=41,200。41,200÷2,135,700×100=1.929… → 1.93%(ネ)。
- 問2 連続した2期間の貸借対照表を比較して各項目の増減を資金の源泉と運用に区分整理した表が資金運用表(キ)、資金調達とその運用の動きを知るための表が資金繰表(チ)。キャッシュ・フロー計算書を作成していない場合、営業キャッシュ・フローは「経常利益(ウ)+減価償却実施額−法人税等+貸倒引当金増加額−売掛債権増加額+仕入債務増加額−棚卸資産増加額+未成工事受入金(ソ)増加額」で代用する(主要比率表の定義)。
同じ論点の過去問
第35回の前後の問題
出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務分析 第35回(2024年9月8日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する