2期分の財務諸表による諸比率の算定(A〜J)と健全性分析(自己資本と他人資本、固定資産と長期資本のバランス)の空欄補充

これは建設業経理士1級 財務分析 第30回(2022年3月13日(日)実施) 第5問(配点 30点)の問題です。論点は「健全性分析:資本構造(自己資本比率・負債比率・借入金依存度・有利子負債月商倍率・流動負債比率)」(重要度A・解答の形は問1:別添資料から10比率(A〜J)を算定(2点×10)。問2:分析文の空欄10個を用語・数値群から選ぶ(1点×10))。採点すると、解き方 14 手順・引っかけの指摘が読めます。

東海建設株式会社の第29期(決算日:20×5年3月31日)及び第30期(決算日:20×6年3月31日)の財務諸表並びにその関連データは<別添資料>のとおりであった。次の設問に解答しなさい。

問1 第30期について、次の諸比率(A〜J)を算定しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をすること。ただし、Dの当座比率は、建設業特有の勘定科目の金額を控除する方法により算定すること。また、Hの完成工事高増減率がプラスの場合は「A」、マイナスの場合は「B」を解答用紙の所定の欄に記入しなさい。なお、解答に際しての端数処理については、解答用紙の指定のとおりとする。

A 自己資本事業利益率 B 立替工事高比率 C 運転資本保有月数 D 当座比率 E 負債回転期間 F 支払勘定回転率 G 付加価値率 H 完成工事高増減率 I 資本集約度 J 配当率

問2 同社の財務諸表とその関連データを参照しながら、次に示す文中の【 】に入れるべき最も適当な用語・数値を下記の<用語・数値群>から選び、その記号(ア〜モ)で解答しなさい。期中平均値を使用することが望ましい数値については、そのような処置をし、小数点第3位を四捨五入している。

安全性分析の一つである健全性分析は、さらに、自己資本と他人資本とのバランスなどを見る【1】分析、有形固定資産と長期的な調達資本とのバランスなどを見る【2】分析、そして利益分配性向分析の三つに分けられる。【1】分析において、指標の数値が高いほど財務の健全性に懸念が生じるのが、【3】と【4】である。この両指標の数値を比較するとより低い数値となるのが【3】であり、第30期における同比率は、【5】%となっている。また、自己資本比率と同様に数値が高いほど望ましく、債務の返済にあたって企業が営業活動から内部的に創出した資金で返済を行うことができるかを見る指標が【6】である。【2】分析において、一般に固定資産への投資は自己資本の範囲内で実施することが理想とされており、これを判断するための指標が【7】である。建設業において大企業のこの数値は、中小企業の数値と比べると【8】のが一般的である。また、流動比率と表裏の関係にあるのが【9】である。第30期における同比率は、【10】%となっている。

  • <用語・数値群>
  • ア 流動負債比率 イ 固定負債比率 ウ 大きい エ 流動性 オ 固定資産回転率 カ 資本構造 キ 活動性 ク 負債比率
  • コ 投資構造 サ 固定比率 シ 固定長期適合比率 ス 変わらない セ 負債回転期間 ソ 有利子負債 タ 小さい チ 付加価値対固定資産比率
  • ト 営業キャッシュ・フロー対負債比率 ナ 完成工事高キャッシュ・フロー率 ニ 28.89 ネ 57.41 ノ 63.23 ハ 65.98
  • フ 66.23 ヘ 68.40 ホ 95.31 ム 223.56 モ 231.73
<別添資料>貸借対照表(資産の部)(単位:千円)第29期 20×5年3月31日現在第30期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動資産 現金預金203,900426,300
 受取手形12,90013,100
 完成工事未収入金1,768,3001,531,800
 有価証券450480
 未成工事支出金229,100216,700
 材料貯蔵品25,40028,900
 短期貸付金1,0001,200
 その他流動資産192,300221,400
 貸倒引当金△200△100
 [流動資産合計]2,433,1502,439,780
Ⅱ 固定資産 1.有形固定資産 建物122,700123,400
 構築物74,70069,800
 機械装置43,88048,700
 車両運搬具64,50075,400
 工具器具備品37,20046,500
 土地143,400143,400
 建設仮勘定1,7005,400
  有形固定資産合計488,080512,600
 2.無形固定資産 ソフトウェア5,0005,800
 その他無形資産21,20027,900
  無形固定資産合計26,20033,700
 3.投資その他の資産 投資有価証券148,400196,400
 関係会社株式60,70079,200
 長期貸付金7,200112,000
 長期前払費用570540
 繰延税金資産39,80028,200
 その他投資資産70,40088,980
 貸倒引当金△47,600△32,900
  投資その他の資産合計279,470472,420
 [固定資産合計]793,7501,018,720
資産合計3,226,9003,458,500
貸借対照表(負債・純資産の部)(単位:千円)第29期 20×5年3月31日現在第30期 20×6年3月31日現在
Ⅰ 流動負債 支払手形115,20065,600
 工事未払金767,900646,900
 電子記録債務325,700297,800
 短期借入金115,00086,700
 未払金79,60080,900
 未払法人税等35,60014,600
 未成工事受入金211,800256,100
 完成工事補償引当金9,2007,500
 工事損失引当金3,3009,900
 その他流動負債110,900218,300
 [流動負債合計]1,774,2001,684,300
Ⅱ 固定負債 社債―50,000
 長期借入金283,300495,200
 退職給付引当金134,100131,000
 その他固定負債41,80029,100
 [固定負債合計]459,200705,300
 負債合計2,233,4002,389,600
Ⅰ 株主資本 1.資本金120,000120,000
 2.資本剰余金 資本準備金3,8003,400
  資本剰余金合計3,8003,400
 3.利益剰余金 利益準備金12,70016,500
 その他利益剰余金910,900960,000
  利益剰余金合計923,600976,500
 4.自己株式△31,200△35,100
 [株主資本合計]1,016,2001,064,800
Ⅱ 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金△22,7004,100
 [評価・換算差額等合計]△22,7004,100
 純資産合計993,5001,068,900
負債純資産合計3,226,9003,458,500
  • 〔貸借対照表の付記事項〕
  • 1.流動資産中の貸倒引当金は、受取手形と完成工事未収入金に対して設定されたものである。
  • 2.その他流動資産は営業活動に伴うものであるが、当座の支払能力を有するものではない。
  • 3.投資その他の資産は、すべて営業活動には直接関係していない資産である。
  • 4.引当金及び有利子負債に該当する項目は、貸借対照表に明記したもの以外にはない。
  • 5.第30期において繰越利益剰余金を原資として実施した配当の額は 37,900 千円である。
損益計算書(単位:千円)第29期 自20×4年4月1日 至20×5年3月31日第30期 自20×5年4月1日 至20×6年3月31日
Ⅰ 完成工事高4,724,1004,216,200
Ⅱ 完成工事原価4,247,3003,826,900
 完成工事総利益476,800389,300
Ⅲ 販売費及び一般管理費229,100233,500
 営業利益247,700155,800
Ⅳ 営業外収益 受取利息7,7304,140
 受取配当金2,8303,760
 その他営業外収益2,5204,880
 営業外収益合計13,08012,780
Ⅴ 営業外費用 支払利息7,54010,820
 社債利息―1,000
 為替差損5,3508,940
 その他営業外費用8,91017,200
 営業外費用合計21,80037,960
 経常利益238,980130,620
Ⅵ 特別利益1609,010
Ⅶ 特別損失1,5104,640
 税引前当期純利益237,630134,990
 法人税、住民税及び事業税72,55037,570
 法人税等調整額2,6902,190
 法人税等合計75,24039,760
 当期純利益162,39095,230
  • 〔損益計算書の付記事項〕
  • 1.第30期における有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費の合計額は 31,400 千円である。
  • 2.その他営業外費用には、他人資本に付される利息は含まれていない。
キャッシュ・フロー計算書(要約)(単位:千円)第29期第30期
Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー△180,100167,230
Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー△34,160△26,820
Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー8,37081,990
Ⅳ 現金及び現金同等物の増加・減少額△205,890222,400
Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高409,790203,900
Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高203,900426,300
完成工事原価報告書(単位:千円)第29期第30期
Ⅰ 材料費849,460727,100
Ⅱ 労務費46,00039,000
 (うち労務外注費)(46,000)(39,000)
Ⅲ 外注費2,760,8002,372,600
Ⅳ 経費591,040688,200
 完成工事原価4,247,3003,826,900
各期末時点の総職員数第29期第30期
総職員数42 人40 人

解答欄 主要比率表(算式)を別タブで開く

%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
月
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入。建設業特有の勘定科目の金額を控除する方法
月
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
回
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入。符号は付けない
A=プラス、B=マイナス
千円
千円未満を切り捨て
%
小数点第3位を四捨五入し、第2位まで記入

金額はカンマなしでも入力できます。

正解

問1 A 自己資本事業利益率13.81 %
問1 B 立替工事高比率33.96 %
問1 C 運転資本保有月数2.15 月
問1 D 当座比率138.05 %
問1 E 負債回転期間6.80 月
問1 F 支払勘定回転率5.28 回
問1 G 付加価値率25.56 %
問1 H 完成工事高増減率10.75 %
問1 H 完成工事高増減率の記号B
問1 I 資本集約度81,529 千円
問1 J 配当率31.58 %
問2 空欄1カ
問2 空欄2コ
問2 空欄3イ
問2 空欄4ク
問2 空欄5ハ
問2 空欄6ト
問2 空欄7サ
問2 空欄8タ
問2 空欄9シ
問2 空欄10ニ

解き方

  1. 期中平均を使うのは、主要比率表で(※)が付く貸借対照表の残高を損益計算書のフローと対比させる比率(Aの自己資本、Fの支払手形+工事未払金、Iの総資本と総職員数)。B・C・D・Eのように期末の状態を示す比率は第30期末の残高で計算する。月商=完成工事高÷12=4,216,200÷12=351,350。
  2. A 自己資本事業利益率=事業利益÷自己資本(※)×100。事業利益=経常利益+支払利息=130,620+(支払利息 10,820+社債利息 1,000)=142,440(付記事項2のとおり、その他営業外費用に利息は含まれない。為替差損は利息ではない)。自己資本=純資産合計の平均=(993,500+1,068,900)÷2=1,031,200。142,440÷1,031,200×100=13.813… → 13.81%。
  3. B 立替工事高比率=(受取手形+完成工事未収入金+未成工事支出金−未成工事受入金)÷(完成工事高+未成工事支出金)×100=(13,100+1,531,800+216,700−256,100)÷(4,216,200+216,700)×100=1,505,500÷4,432,900×100=33.961… → 33.96%。
  4. C 運転資本保有月数=(流動資産−流動負債)÷(完成工事高÷12)=(2,439,780−1,684,300)÷351,350=755,480÷351,350=2.150… → 2.15 月。
  5. D 当座比率(建設業特有の科目を控除する方法)=当座資産÷(流動負債−未成工事受入金)×100。当座資産=現金預金 426,300+受取手形 13,100+完成工事未収入金 1,531,800−貸倒引当金 100+有価証券 480=1,971,580。分母=1,684,300−256,100=1,428,200。1,971,580÷1,428,200×100=138.046… → 138.05%。
  6. E 負債回転期間=(流動負債+固定負債)÷(売上高÷12)=2,389,600÷351,350=6.801… → 6.80 月。
  7. F 支払勘定回転率=完成工事高÷(支払手形+工事未払金)(※)。第29期末 115,200+767,900=883,100、第30期末 65,600+646,900=712,500、平均 797,800。4,216,200÷797,800=5.284… → 5.28 回(電子記録債務は算式に含めない)。
  8. G 付加価値率=(完成工事高−(材料費+外注費))÷完成工事高×100。労務外注費は外注費として扱うので、材料費 727,100+外注費 2,372,600+労務外注費 39,000=3,138,700 を控除する。付加価値=4,216,200−3,138,700=1,077,500。1,077,500÷4,216,200×100=25.556… → 25.56%。
  9. H 完成工事高増減率=(当期完成工事高−前期完成工事高)÷前期完成工事高×100=(4,216,200−4,724,100)÷4,724,100×100=−507,900÷4,724,100×100=−10.751… → 10.75%、マイナスなので記号はB。
  10. I 資本集約度=総資本(※)÷総職員数(※)。総資本の平均=(3,226,900+3,458,500)÷2=3,342,700、総職員数の平均=(42+40)÷2=41 人。3,342,700÷41=81,529.2… → 81,529 千円(千円未満切り捨て)。
  11. J 配当率=配当金÷資本金×100=37,900÷120,000×100=31.583… → 31.58%。配当金は付記事項5の 37,900。
  12. 問2(用語)健全性分析は、自己資本と他人資本のバランスを見る資本構造(カ)分析、有形固定資産と長期資本のバランスを見る投資構造(コ)分析、利益分配性向分析の3つに分かれる。資本構造分析で数値が高いほど懸念が生じるのは、固定負債比率(イ)=固定負債÷自己資本×100 と負債比率(ク)=(流動負債+固定負債)÷自己資本×100 で、分子が小さい固定負債比率の方が低い数値になる。営業活動で内部的に創出した資金で債務を返済できるかを見るのは営業キャッシュ・フロー対負債比率(ト)。投資構造分析で、固定資産への投資が自己資本の範囲内かを判断するのが固定比率(サ)=固定資産÷自己資本×100 で、建設業では大企業の方が中小企業より小さい(タ)のが一般的。流動比率と表裏の関係にあるのが固定長期適合比率(シ)。
  13. 問2【5】固定負債比率(第30期末)=705,300÷1,068,900×100=65.983… → 65.98%(ハ)。参考:負債比率=2,389,600÷1,068,900×100=223.56%(ム)で、固定負債比率の方が低い。ヘ 68.40 は期中平均の自己資本 1,031,200 で割った値、モ 231.73 は負債比率を期中平均で計算した値。
  14. 問2【10】固定長期適合比率は、文中で投資構造分析を「有形固定資産と長期的な調達資本とのバランス」と説明していることから、主要比率表の別法(有形固定資産÷(固定負債+自己資本)×100)で計算する。512,600÷(705,300+1,068,900)×100=512,600÷1,774,200×100=28.891… → 28.89%(ニ)。固定資産全体で計算すると 1,018,720÷1,774,200×100=57.418… → 57.42% となり、数値群のネ 57.41 とは一致しない。ホ 95.31 は固定比率(1,018,720÷1,068,900)。
引っかけ:Aの支払利息には社債利息を含める(為替差損・その他営業外費用は含めない)。Dの当座資産は受取手形と完成工事未収入金から貸倒引当金 100 を引き、有価証券 480 を加える。その他流動資産は付記事項2のとおり当座資産に入れない。Fの支払勘定は支払手形と工事未払金だけで、電子記録債務は含めない。Gでは労務費が全額労務外注費なので外注費として控除する。Iは総資本も総職員数も期中平均にする。問2【10】は固定資産全体ではなく有形固定資産で計算した 28.89(ニ)で、57.41(ネ)は固定資産全体で計算した 57.42 に近い誤答肢。

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出典:一般財団法人 建設業振興基金が実施した建設業経理士1級 財務分析 第30回(2022年3月13日(日)実施) 第5問。問題文は本試験の問題にもとづいています。解答・解説・論点の整理は資格試験対策.netの独自コンテンツです。最終更新 。この問題の誤りを報告する