電気工事施工管理技士は独学か講座か:検定ごとの判断のしかた
電気工事施工管理技士は、第一次検定なら主催者が公表する問題と正答肢だけで答え合わせができ、過去問中心の独学で十分に戦えます。第二次検定も計算と法規の択一式は同じですが、施工経験記述や技術用語などの記述問題は正答が出ないため、書いた文を誰かに読んでもらう仕組みを用意できるかが、講座を使うかどうかの分かれ目になります。
独学で足りる範囲と、人の目が欲しい範囲
第一次検定:公表された問題と正答肢で完結する
建設業振興基金は、第一次検定の問題と正答肢番号を、試験日の翌営業日の午前 9 時から 1 年間、サイトに掲載しています。出題は数値や語句を差し替えた同じ論点の繰り返しが多く、送電の線路定数やフェランチ現象、受変電設備のキュービクルの構造、建設業法の許可のように、同じテーマが年をまたいで何度も出ます。論点ごとに過去問を解き、誤りの選択肢を自分の言葉で正しく直せる段階まで進めれば、合格基準の 60% は見えてきます。
独学でつまずきやすいのは、電気理論の計算と、普段の仕事で触れない設備(発電・電車線・道路照明など)です。ただ、どちらも選択問題が多い区分にあり、1級は電気設備 32 問から 14 問、2級は 19 問から 10 問を選ぶので、苦手な設備は解かないと決めることもできます。講座を使うと学習の順序を組んでもらえ、分からない点を質問できますが、身につける知識そのものは過去問の解説から得られるものと大きく変わりません。
第二次検定:択一式は独学、記述は第三者の目
第二次検定のうち、1級の問題5・6(計算・法規の五肢択一)、2級の問題4・5(計算・法規の四肢択一)は令和4年度以降、正答肢が公表されているので、第一次検定と同じように自己採点できます。
難しいのは、施工経験記述(1級は問題1・2、2級は問題1)と、1級の問題3(労働災害の防止または品質を確保する方法)・問題4(技術用語)、2級の問題2(施工管理か安全管理の語句、単線結線図)・問題3(技術用語)です。記述式は正答も配点も公表されません。設問の条件から外れていないか、「具体的に」の指示に足りているかは書いた本人ほど気づきにくく、添削する人の目がもっとも効いてくるのがこの部分です。
令和6年度からは、施工経験記述が「示された条件の電気工事について、経験を踏まえて書く」形に変わりました(問A・問B から選ぶ)。講座を選ぶときは、自分の工事の記述を事前に作って覚える旧来の指導だけでなく、示された条件に合わせて書く練習と添削があるかを確かめてください。
独学が向いている人、講座が向いている人
| 独学が向いている | 講座が向いている | |
|---|---|---|
| 経験 | 受変電・幹線・照明などの施工管理に関わり、機器や工法の名前に迷わない | 設計・営業・保守からの受検や、学生で、施工の現場を見た経験が少ない |
| 電気の基礎 | 電気工事士や電気主任技術者の試験に合格していて、計算に抵抗がない | 電気理論の計算を、説明を聞きながら覚えたい |
| 進め方 | 過去問を自分のペースで回せる | 締切や課題がないと続かない |
| 記述 | 社内に添削してくれる 1級電気工事施工管理技士がいる | 書いた文を見てくれる人が身近にいない |
| 受検歴 | 初めての受検で、時間を取れる | 第二次検定で評定 C だった、同じやり方で一度落ちた |
令和6年度から、1級の第一次検定は 19 歳以上、2級は 17 歳以上なら実務経験なしで受けられるようになり、1級の第一次検定の受検者は令和5年度の 16,265 人から令和8年度の 27,387 人に増えました。現場経験の浅い受検者が増えているので、「独学が向いている」の列に当てはまらない人も多いはずです。その場合も、まず過去問を 1 回分解いてみて、解説を読んで理解できるかで判断すると、講座が本当に要るかが見えてきます。
通信講座・スクール・社内研修
通信講座
動画や教材で空いた時間に進められ、多くは第二次検定の記述添削が付いています。比べる目安は、添削を何回受けられるかと、提出から返ってくるまでの日数です。1級は第一次検定(7 月)から第二次検定(10 月)まで 3 か月ほどしかなく、2級は後期の第一次検定と第二次検定が同じ日(11 月)です。直前期に 2 回以上の添削が戻ってくる日程かどうかが分かれ目です。
資格スクール(通学・ライブ配信)
講義の日程が決まっているので、ペースを人に作ってもらいたい人や、短期間で集中したい人に合います。電気理論の計算やネットワーク工程表の解き方を、その場で講師に聞ける点は通学ならではです。一方で受講料は通信講座より高めのことが多く、現場の休みと講義日が重なるかどうかも確かめておく必要があります。
会社の研修・社内の勉強会
電気工事会社の中には、受検費用や講座代の補助、有資格の社員による施工経験記述の添削、過去問の勉強会などを設けているところがあります。停電作業の段取りや試験・検査の手順を知る先輩の指摘は具体的で、施工経験記述と品質・安全の記述を仕上げるには近道です。講座を探す前に、まず社内にどんな支援があるかを確かめてください。
費用の考え方
講座の料金は会社やコースで大きく違うので、ここでは具体的な金額には触れず、判断の物差しだけを示します。物差しになるのは、講座の料金と、受検がもう 1 回先に延びたときに失うものとの比較です。
受検手数料(非課税)は、令和8年度で 1級が第一次検定 15,800 円・第二次検定 15,800 円、2級が第一次検定のみ 7,900 円・第二次検定のみ 7,900 円・第一次と第二次の同時受検 15,800 円です。落ちれば手数料をもう一度払うだけでなく、技士補・技士になる時期が、1級なら 1 年、2級なら半年から 1 年後ろにずれます。電気工事業は指定建設業なので、1級は特定建設業の営業所や監理技術者に欠かせない資格です。講座の料金は「合格が早まる可能性をどれだけ高めてくれるか」と照らして考えるのが筋です。
逆に、その年は第一次検定しか受けないのに、第二次検定まで含んだ一式のコースを買うのは割高になりがちです。費用をかけるなら、正答が公表されない第二次検定の記述の添削に絞るのが効率的です。当サイトでも、過去問と解説は無料で解け、予想問題は有料会員向けに用意しています(料金)。
記述を人に見てもらうときの確認点
添削を頼むときは、次の点を重点的に見てもらうよう伝えると、1 回の添削から得るものが増えます。いずれも書いた本人には見えにくく、読む側にはすぐ目につく点です。
- 示された条件に合っているか。問A・問B の条件(施設が運用中、関連工事と輻輳、作業日や作業時間の制約など)に合わない一般論になっていないか。電気工事の作業内容が分かる書き方か(令和8年度の 1級は明記されていました)
- 配点されない書き方になっていないか。安全管理の設問では「保護帽の単なる着用のみ」「要求性能墜落制止用器具の単なる着用のみ」の記述は配点しないと指定されています。令和6年度の 1級は、電気工事に附帯する工事を主体に書かないよう指示されました
- 同じ内容を繰り返していないか。「対策の内容は重複しないこと」とあるのに、言い換えただけの同じ対策を並べていないか
- 数値と手順で書けているか。「十分に注意する」「確実に行う」で終わらず、停電の範囲と時間、検電の手順、締付けトルクの確認、絶縁抵抗の測定のように、数値や順序で書ける内容を書いているか
- 技術用語は 2 つの観点で書けているか。1級・2級とも「技術的な内容」として、施工上の留意点・動作原理・目的・特徴・対策などから 2 つを書く形です。同じ観点を言い換えただけになっていないか
直前に 1 回だけでは直しきれないので、下書きは早めに出し、最低 2 往復させてください。1 往復目で条件からのずれを、2 往復目で数値の具体性と文の長さを整えるのが目安です。
独学の人がそろえるもの
- 計画表:申込の締切と試験日から逆算し、週ごとに解く回数と論点を決める(例は学習スケジュールの記事)
- 問題集:当サイトの解説つき過去問(1級 第一次・2級 第一次・1級 第二次・2級 第二次)。施工や数値の裏付けには、電気設備の技術基準の解釈と公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)
- 記録:論点別の正答率を残し、6 割に届かない論点をその週のうちに解き直す
- 読み手:施工経験記述は社内の有資格者や一緒に受ける同僚と読み合う。身近にいなければ添削だけの講座を使う
- 通し演習:直近の回を試験時間どおりに、電卓を使わずに解き、時間配分を体で覚える
よくある質問
第一次検定だけなら講座は要りませんか?
多くの人は不要です。問題と正答肢が公表されているので、解説つきの過去問を論点ごとに解けば自己採点まで完結します。電気理論の計算がまったく分からない場合や、施工の現場をほとんど見たことがない場合は、基礎の部分だけ講座や入門書を使うと効率が上がります。
第二次検定は独学で受かりますか?
計算と法規の択一式は独学で仕上がります。施工経験記述と技術用語などの記述は、正答が公表されないので、社内の有資格者や同僚に読んでもらうか、添削だけの講座を使うと、条件からのずれに気づきやすくなります。
添削は何回受ければよいですか?
目安は 2 往復以上です。1 回目で設問の条件からのずれを、2 回目で数値や手順の具体性を直します。1級は第一次検定から第二次検定まで 3 か月ほどしかないので、早めに出してください。
電気工事士の資格があれば独学で十分ですか?
電気理論・構内配線・電気工事士法などは重なるので有利ですが、施工管理法(工程・品質・安全)、建設業法・労働安全衛生法、送配電・発電・電車線などは電気工事士試験にない範囲です。過去問で 1 回分解いてみて、正答率の低い区分から計画を立ててください。
あわせて読む
出典・参考:一般財団法人 建設業振興基金 1級電気工事施工管理技術検定・2級電気工事施工管理技術検定(令和8年度の受検手数料、試験問題と正答肢の公表)、令和6〜8年度 1級・令和6〜7年度 2級 電気工事施工管理技術検定 第二次検定の試験問題(問題1 の条件)
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